鍋パーティーのブログ

再分配の重視を求める「鍋パーティー」の共用ブログです。

マクロ経済スライドの廃止ではなく、1階部分の国庫負担による上積みを

 本日、この『鍋パーティーのブログ』にブログ主催者であるid:kojitakenさん自身が、新ブログになってからは実質初めての記事を投稿されるとともに、読者にも記事の執筆を呼びかけられた。それを受けて、私も、再分配の中でも年金について、(年金は本来は再分配政策とは異なる領域の政策であるのだろうが、)拙いながらも私見を述べたいと思う。

 

 ちょうど今日のことだが、朝日が次の世論調査を報じた。

digital.asahi.com

安倍晋三首相に一番力を入れてほしい政策は?」という質問に対する回答が、「年金などの社会保障」38%、「教育・子育て」23%、「景気・雇用」17%、「外交・安全保障」14%、「憲法改正」3%となったというものである。政権が何をアピールしようとしても、何を声高に主張しても、依然として社会保障に対する関心がそれらよりも高いということが分かる。

 

 では、関心の高い「年金などの社会保障」について、今回の参院選で各党はどんなことを訴えたのか。それをNHKによる「NHK選挙WEB」の「選挙データベース」で簡潔にみることができた。ただし、残念ながら、台風の目になった「れ新」については、選挙前に政党要件を満たしている7つの政党が対象ということで、ここではみることができなかった。


www.nhk.or.jp

年金について目を引くところは、多くの党が低年金者への支援を掲げていること、共産と社民が「マクロ経済スライド」の廃止やそれによる「年金の抑制の中止」を掲げていること、維新が「積み立て方式への移行」を掲げていることなどである。

 

 さて、私がここで主張したいことの1つは、共産や社民の求めている「マクロ経済スライドのの廃止」ないし「マクロ経済スライドによる年金の抑制の中止」は、いわゆる「年金の2階部分」については、再分配の観点から望ましくない、ということである。なぜなら、久しく叫ばれているように、制度設計の失敗から、公的年金の積立金の枯渇が必至であるからである。積立金が枯渇する中で現制度での給付水準の維持を求めれば、当然、保険料か国庫負担のいずれか、または、両方の引き上げが必要になる。ここで、「2階部分」、つまり公務員共済組合や厚生年金などの老齢年金給付は、現役時代の個人間の所得格差を退職後も保障するという性格をもつ、ということを考えなければならない。現役時代に多くの保険料を納めた者がそれに応じた年金給付を受けるとは、そういうことである。積立金が枯渇するなかで保険料や国庫負担を増額すれば、それはこの所得格差の保障のために、現役世代により多くの保険料を納めさせたり、広く国民にさらに重い税負担を強いるということになる。それは逆再分配的な政策であるといえる。そして、本来、倫理的にも感情的にも受け入れられる政策ではないはずである。

 

 しかし、マクロ経済スライドの廃止を認めず、積立金の減少に応じて給付を減額していくことにすれば、将来の生活不安が厳しい実態をともなうものとして広がることになる。そこで、私が主張したいことのもう1つが、1階部分の国庫負担による上積みを、ということになる。それは、中間層の人たちの2階部分の給付の減少を、相殺するに十分な額であることが望ましいだろう。1階部分が広く国民全体を覆うものだとすれば*1、2階部分とは違い、そこに広く国民に税負担を求めることに問題は生じない。さらには、税制を累進的なものに改革することにより、再分配を強力に推し進めることができる。再分配を求める立場の人たちこそ、このような制度改革を求めていくべきではないだろうか。

 

 このようなことについては、おそらく専門家や研究者も少なくなく、著書や論文も多く出されているのではないかと思います。にも拘わらず、それらを読んだこともない私がこうして拙い主張をするのは、これをこのような議論の叩き台にしていただいたり、そうした著書やブログ記事などを紹介していただくことで、よりよい認識が広まっていくことに僅かでも貢献できればという思いからです。ご意見、ご助言等いただければ、大変うれしく思います。ぜひ、よろしくお願いします。

*1:ここで、決して少なくない年金未納者についてどうするかという問題が課題として残されるということはあるのだが。